引っ越して来たりし街に笹子鳴く (平成18年11月)
使はれぬままに置かれし暖炉かな(平成18年12月)
お下がりのセーター袖を折り返す(平成19年1月)
立春の空晴れ渡り吾子生るる(平成19年2月)
野生馬よ遊牧民よ春の土(平成19年3月)
鞦韆の鉄のにほひの掌 (平成19年4月)
学生のファッション眩し夏来る (平成19年5月)
壁紙の絵柄に蜘蛛の加わりし (平成19年6月)
汗掻きの父に似たりし吾子の汗(平成19年7月)
眠りたる吾子を背負いて大花火(平成19年8月)
住み慣れて来しこの街の夕焼くる(平成19年9月)
子の涙エプロンで拭く秋の暮(平成19年10月)
親といふ自覚新たに七五三(平成19年11月)
御正忌や炎大きく朱蝋燭(平成19年12月)
凧と吾を繋ぐ糸でありにけり(平成20年1月)
先に来し人の足跡蕗の薹(平成20年2月)
婦人等のおしゃべり続き麗らかや(平成20年3月)
するつもりなき大掃除してをりし(平成20年4月)
五月闇水族館の深海魚(平成20年5月)
梅雨晴れや吾子の長靴干せる庭(平成20年6月)
日焼せしことも母なることなれば(平成20年7月)
子燕の巣立ちて吾の親心(平成20年8月)
蚊帳の中過去と未来の語られし(平成20年9月)
あやとりの吾子の手小さき秋灯下(平成20年10月)
父は子と遊び勤労感謝の日(平成20年11月)
母と子の並べ置かれし風邪薬(平成20年12月)
ちゃんちゃんこ着し住職に迎へらる(平成21年1月)
紅白の梅のほどよく混ざる丘(平成21年2月)
春泥をまとひし庭より戻りし子(平成21年3月)
吾子の手に枝垂桜の伸びをりし(平成21年4月)
黒土に花屑散ってをりにけり子(平成21年5月)
日除け帽畳めば世界広がりし(平成21年6月)
一房のバナナに子らの手の伸びて(平成21年7月)
学校のチャイム遠くに夏休(平成21年8月)
東京の空の何処かに天の川(平成21年9月)
キコキコと古き自転車秋日和(平成21年10月)
コスモスの揺れて思い出巡りけり(平成21年11月)
早足をポインセチアの赤に止め(平成21年12月)
一仕事終え炬燵へと戻りけり(平成22年1月)
本を読む顔ふと上げて春を待つ(平成22年2月)
うつし合ふ風邪に家族の絆かな(平成22年3月)
境内の夕日や雉子の羽の色(平成22年5月)
宿題をしながらつまむさくらんぼ(平成22年6月)
梅雨一と日主婦の一人居なりしかな(平成22年7月)
子の日焼け子の成長となりにけり(平成22年8月)
入院の閉め切る窓に蝉時雨(平成22年9月)
温度計見る前にある暑さかな(平成22年10月)
手際よく夜食を作る夫であり(平成22年11月)
子を夫に預け師走の町へ出て(平成22年12月)
衝動買ひしたるポインセチアかな(平成23年1月)
炬燵出す出さぬで家族会議かな(平成23年2月)
春を待つ習い始めしピアノかな(平成23年3月)