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坊守の俳句エッセイ

早足をポインセチアの赤に止め   釋法蓮(法子)

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十二月に入ると、花屋の店先にはポインセチアの鉢が並びます。あまりにも真っ赤な色につい足を止め、見入ってしまいます。やはり赤は目立ちますし、人を引き付ける色ですよね。 

 最近、私の身の回りには赤い色が溢れています。バッグ、化粧ポーチ、たまにはくスカート、今このエッセイを書いているキティちゃんのシャーペン・・・。明らかに赤いものが多いです。

また他にはピンクやキラキラ光るもの、キャラクターものも多いのです。でも考えてみると、私は若かりし頃、そのような女の子ものが大嫌いでした。学生の頃、皆がキティちゃんの赤やピンクの小物で固めているのをひそかに軽蔑していました。

着る服にも法則があり、黒、紺、白以外は身につけないとういう徹底ぶり。今思い返せば、クール路線を狙っていたのでしょうね。

その路線が崩れだしたのは、三十代に入ってからだと思います。なんだか、黒が似合わない、黒に飽きたと思い出したのです。長年の自分の信念が崩れてきた理由として、時代の流行、娘の影響もありますが、一番には、そこまで格好つけられなくなってしまったことだと思います。 

自分の心境の変化というのは、本当に驚くべきものがあります。未来の自分はいったいどんなオバサンになっているのでしょうか。

 

コスモスの揺れて思い出巡りけり   釋法蓮(法子)

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コスモスが盛りを過ぎ、淋しげに咲いている季節です。いよいよ秋の終わりを感じます。コスモスを見ると必ず思い出す友人がいます。

小、中学校からクラスで一番頭が良く、メガネをかけた、いかにもガリ勉という女の子でした。その子と、小学三年生当時、はやっていた交換日記をしてみたく、私からお願いして、快く引き受けてもらいました。

すると、彼女は思いのほかとてもユーモアがあり、絵も文章も上手で、素晴らしい日記を記してくれたのです。それが何と、断続的ではありますが、中学三年生まで続いたのです。

中学生の頃、夢見がちな私たちは、放課後よく、くだらないおしゃべりを延々としていました。その時、私が「私って花に喩えると何かな」と聞くと、その子は即答で「コスモス」と答えました。

それはとても意外な答えでした。私にとってコスモスは繊細で美しいイメージだったので。はっきり物を言う彼女はお世辞を言う人ではありません。しかし、そのコスモスの理由を聞くと、何故か最後まで教えてくれませんでした。

いったいどうしてコスモスなのか、さっぱり分かりません。その後、彼女とは疎遠になってしまいましたが、今でもコスモスを見て、私を思い出してくれているのでしょうか。

 

キコキコと古き自転車秋日和   釋法蓮(法子)

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秋日和(秋晴れ)の日は、とても気持ちが良いものですね。今日はまさにそんな日なので、ついうとうとしてしまい、なかなか筆が進みません。

 この句は十三年前の十月、私が初めて俳句したもので、とても思い入れがあります。その頃、俳句の作り方をテレビで観て興味を持ち、いずれ作ってみたいと思っていました。

そんな秋日和のこと。私が自転車で走っていると、後ろから「キコキコ」と音が聞こえてきました。「何だろう?」と思っていると、錆びかかった古い自転車をこいでいるおじさんが、そのまま私を追い越して行ったのです。キコキコと音をたてながら。それが味のある光景だったので、俳句を作ってみました。

自分でもなかなかの出来だと思い、朝日新聞の俳句欄に投句しました。それが初入選したことで、自分の世界が広がった気がしました。

この句は、あの頃の俳句との出合いや、新鮮な気持ちを思い出させてくれます。
 

 

東京の空の何処かに天の川   釋法蓮(法子)

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日頃から、ちょっとでも目に止まった本を、乱読しています。流行り物を始め、大抵文系の本です。しかし、先日リビングに読みかけの「宇宙物理学入門」の本を置いていたら、主人がとても驚いていました。

この頃、宇宙に関する本を読むのが、とても楽しいのです。あまりのスケールの大きい数字に驚愕し、感動をしています。

天の川とは銀河ともいいます。銀河は直径約十万光年ある巨大な星の集まりで、この中に恒星(太陽など自分でエネルギーを作って輝く天体)が約二千億個あるといわれています。これが地球の夜空に、淡く帯状に見えるのです。
 
しかし私は生まれてから一度も本物の天の川を見たことがありません。天体望遠鏡も持っていませんし、何より都心では町が明る過ぎ空気も汚れていますので、見ることのできる星は限られています。

でも、空に天の川があるのは確かです。目には見えませんが、無数の星々が宇宙に存在するというのは考えるだけで楽しい気持ちになります。

 

学校のチャイム遠くに夏休   釋法蓮(法子)

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皆さんは最近学校のチャイムの音を聞いたことがありますか。「キーンコーンカーンコーン」というあのメロディーです。あれを聞くと私は懐かしくも、また緊張感をおぼえます。私の学校へのイメージそのものなのです。

ところで、早いもので、来年から娘が小学校へあがります。今から、考えなければならない事や、やらなければいけない事がたくさんあります。まだ実状は幼稚園児なのに、私の中では、娘は小学生です。すると、今ままで全く気にとめなかった事が気になりだしました。

娘が通う予定である小学校のチャイムがかすかに聞こえることに気付いたのです。人間の意識とは本当に不思議なものです。そして、毎朝始業のチャイムが聞こえる時、今の娘はまだ熟睡中。一体一年後は、どうなっているのか途方に暮れてしまいます。

今は夏休み真っ只中。それでもチャイムは聞こえてきます。子供のいない教室や校庭に鳴り響いていることでしょう。チャイムの音もいつもとは一味違った趣を感じさせてくれます。

 

一房のバナナに子らの手の伸びて   釋法蓮(法子)

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私は若かりし頃から色々なダイエットに挑戦しています。しかし、どれも失敗ばかりでした。そんな私が初めてダイエットに成功しました。それは、今更ですが、朝バナナダイエットです。

マスコミでもちょっと前まで大騒ぎで、未だ続けている人っていないですよね。もう半年になり、体重と体脂肪が少し減りました。このダイエットは、ただ朝にバナナを食べればいいというわけではありません。

規則正しい生活をするということが大事なのです。今までの生活を見直せたことが、痩せたことよりも良かったと思っています。また、このダイエットは、毎日バナナを食べるので、常に食べごろのものを用意しておかなければなりません。

しかし、冒頭の句のように、いい感じに熟したのを見計らったように娘が急に食べだします。句では「子ら」とありますが、我が家では主人が夜食で一気に二本くらい房からむしって食べるので、明朝までバナナが残っているか、いつもひやひやします。でも体のためにはラーメンなどよりはましかと、黙認している今日この頃です。

 

日除け帽畳めば世界広がりし   釋法蓮(法子)

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陽射しが強くなってきましたね。もうすっかり夏です。以前にも書きましたが、私は紫外線アレルギーなので、夏は日光との戦いです。日焼け止めクリームを塗り、日傘をさし、特に帽子は欠かせません。

なぜなら、意外と目の保護は大切なポイントらしいのです。目から入ってきた光の量で日焼けするかどうか決まるそうですし、また、将来の目の病気の予防にもなるようです。

しかし、せっかくの開放的な夏に、陽射しを避けるの防備は容易ではありません。とにかく暑いですし、見た目も暑苦しいです。ですが、日光を浴びた時のじんましんのかゆさに比べればなんともありません。

時々娘は、じんましんが出た私の姿を見ると「うつる~怖い~」と逃げ出します。かなりショックです。 

それでも時々、ふと帽子を脱ぐと何とも気持ちが良いのです。視界が開け、青空が広がり、まさに世界が広がったように感じます。私が一番夏を感じる瞬間です。

 

黒土に花屑散ってをりにけり   釋法蓮(法子)

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本当にあっという間に桜は散ってしまい、新緑が眩しい季節になってまいりました。桜の季節が終わる頃は、センチメンタルな気分になります。

 先日、家族で近所のお蕎麦屋さんに行きました。この頃は、お蕎麦の美味しさが身にしみます。若かりし頃は完全なうどん派だったのですが。

何にしようかと店内を見回すと「季節限定さくら天そば」とメニューが張ってありました。“限定もの”に弱い私は、即決でこれにしました。すると、このお蕎麦は目を見張る美味しさだったのです。

そこで、是非両親にもこれを食べさせてあげたいと、その二日後に連れて行ってみると、なんとその桜蕎麦は一日前に終わっていたのです。お店の人は、「もう桜は散りましたので」と言っていましたが、残念でなりませんでした。

家に戻って境内のしだれ桜を見ると、確かに葉桜。でもかすかに黒土の上に桜の花びらが落ちていました。黒土にはえて、色はなお美しく見えます。来年も是非、さくら天そばを食したいと思います。

 

吾子の手に枝垂桜の伸びをりし   釋法蓮(法子)

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すっかり春ですね。春といえば何と言っても桜です。今年は三月末の寒さの戻りで、思ったよりも開花が遅れましたね。本来の時期に桜が満開で入学式を彩ることができるでしょう。

ところで、皆さんはお花見はお好きでしょうか。私は面倒くさがりなので、どうもわざわざ計画して、お弁当を持ってお花見にいくのが苦手です。考えるだけで疲れてしまうのです。それよりももっと身近で桜を見るのが好きです。

立徳寺には、たった一本の枝垂桜が満開です。先日の夕方、庭に出て娘と二人で桜の木の前で佇み、お花見をしました。今更のようですが、なんと桜は美しいのでしょう。微妙な色と繊細な造形。夕方を背景に、それは美しい「夕桜」でした。

桜は一年間で今の時期しか見られません。悔いを残さぬように、しっかりと瞼に焼き付けておきたいと思います。
 

 

春泥をまとひし庭より戻りし子   釋法蓮(法子)

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先日、娘と庭でカスミ草の花の種をまきました。花粉症の私は、早々に家に戻りましたが、娘は泥遊びがしたいと言うので、そのまま遊ばせておきました。

リビングの窓から見ていると、娘は真剣な顔をして、シャベルで一生懸命穴を掘っていました。すると、たった数分後、泥だらけの靴で窓の前に立ち「もうやめる」と言ってきました。理由を聞くと「穴をから、どじょうが出てきて気持ち悪い」と言います。

私は大笑いしました。どうやら娘は初めてミミズを見たらしく、ニョロニョロしているから、どじょうだと思ったと言うのです。どじょうを知っていてミミズを知らなかったとは・・・。

そして、娘は私に向かって「なんであんなに気持ちの悪いミミズがお庭にいるの」と難しい質問を投げかけてきました。一瞬困りましたが、「ミミズさんは、すごく大切なお仕事をしているんだよ、お庭の土を良くしてくれているから、きれいなお花が咲くんだよ」と何とか答えました。

の時は娘も納得した様子でしたが、それから、ぱったりと庭での泥遊びをしなくなりました。やはりミミズが苦手らしいことに変わりはないようです。
 

 

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