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坊守の俳句エッセイ

葛藤の心抱えて町うらら

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先日、いつものように食料品の買い出しに行った時のこと。かなりの量をカゴに入れ、レジに並んでおりました。自分の番がまわってきて、財布を開けると、そこにお札はなく、レシートばかり。小銭はありましたが、とても足りない。一瞬にして冷や汗が出てきました。「お金を車の中に忘れてきたようなので、すぐ取りに行ってきます。」と走りだしました。車に戻ってみてもお金は無く、仕方なく家に戻ることに。その間、私は「こういう時、そのまま戻らない人もいるんだろうな」などと、心の中で葛藤していました。
 レジに戻り、「すいません。車にお金が無かったので、家まで帰っていました」と言うと、レジの人は「戻ってきていただいて良かったです。」と嬉しそうな顔をしていました。そして、「冷凍のものは冷凍庫に戻してしまったので、自分でだしてください」と言いました。やはり、私の戻りが遅かったため、もう戻らないかもしれないと思ったのでしょう。その時ふとこれは、太宰治の「走れメロス」にそっくりだと気付きました。葛藤の中にも人を信じる尊さを説く、誰もが知る名作。こんな日常の中にも名作が息づいているとは、驚きました。

 

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