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法話

新年の始まりに

先日、法話会の後、ご聴聞されておられた方が、こんなことをおっしゃっていました。「このお話は以前にも聞かせてもらったことがありました。でも、だいぶん忘れていたところもあって、思い出しながら聞かせていただきました。やはりご法話は何度でも聞かせていただくものですね」と。
 
まさに聴聞とは、繰り返し聞き、うなずかせていただくものであります。私もそのお言葉に改めて、ご聴聞の大切さを感じさせていただきました。
さて、毎年お正月を迎えると、いつも思い浮かぶお聖典の言葉があります。『蓮如上人御一代記聞書』に書かれている、「道徳はいくつになるぞ、道徳念仏申さるべし」という、蓮如上人の言葉です。
 
これは明応二年(一四九三)の元日、蓮如上人が門弟の道徳さんに向かって語られたと伝えられている言葉です。弟子の道徳さんが、新年のご挨拶に蓮如上人を訪ねると、蓮如上人はいきなり、「道徳は何歳になったのだ、お念仏を申しなさい」と、お正月早々、厳しい言葉でおっしゃったそうです。道徳さんはとてもびっくりされたと思いますが、そのお言葉は、本当に大切なことであるからこそ、お正月の年頭の挨拶の時におっしゃったお言葉だったのでした。
 
新年を迎えると、私たちは「おめでとう、おめでとう」と祝辞を述べて浮かれていますが、蓮如上人は、「何が本当にめでたく、歳を重ねるということはど
ういうことか」を問われているのです。つまり、新年を迎へ歳を重ねるということは、いよいよ「生の意味、死の意味」をしっかり考えなければならない時期であることをさとされているのです。
 
また、「いくつになるぞ」とお言葉は、新年を迎え、今年もこのままの状態で続きたいと願っている私たちに、「いつまでも同じではない。だからこそ今を大切にしなければならないぞ」という問いかけでもありましょう。
 
そもそも、すべてが今のまま持続していくという考え自体が誤りであり、常に変わり続けているのが、私と私をとりまく世界です。肉親との別れ、仕事上での挫折、突然病気になってしまうこともあるかもしれません。大きな変化が起きるということは常に心得ておく必要があるのです。そして、どのような人生の問題にぶつかっても、如来様のお救いの中にあることを思い、お念仏申す身となってくださいと、蓮如上人がよびかけてくださったのです。
 
今を大事にすることは、今年を大事にすることであり、そのまま一年、そして生涯を大事にしていくことでもあるのです。新年の始まりに、蓮如上人のきびしい問いかけをしっかりと心に置き、聴聞に励む一年でありたいことです。
 
合  掌

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